今年11月に開館しました『すみだ北斎美術館』に行ってきました。日本を代表する江戸後期の絵師葛飾北斎。生涯を絵に捧げた彼の作品を堪能してきました。「すみだ北斎美術館」はオープン間もないことあり非常に込み合っていたので、しばらく待って行った方がじっくりと観ることが出来ると思います。
まえがき
今回、「すみだ北斎美術館」に行こうと思ったのはNHK番組の「ロスト北斎」観たからです。番組は関東大震災で消失した北斎の「幻の巨大絵」を現代の画像分析技術を駆使して復元させるというものでした。晩年の北斎がそれまでの絵師人生の思いを込めて描いた作品を一目見たいと強い衝動にかられました。
NHK「ロスト北斎」
幻の巨大絵とは北斎86歳(1845年)の時に描いた「須佐之男命厄神退治之図」という絵です。絵の具や筆使いなど出来るだけ当時のものに近づけて再現していきます。
「須佐之男命厄神退治之図」に関しては以下の説明がなされています。
幅3メートルもある大画面に、須佐之男命が十数名の疫病神を退治する様子が、きらびやかな色彩と、大胆な筆遣いで描かれたという肉筆の大群像画。まさに北斎版の「ゲルニカ」とも言える大作だ。江戸・向島の牛嶋神社に奉納されたが、関東大震災で焼失。その姿を知る手がかりは、明治末に写された、一枚のモノクロ写真だけだった。
多くの人が知っている北斎の代表作『冨嶽三十六景』「神奈川沖浪裏」などは版画で、北斎70代のものです。
北斎86歳でしかもな肉筆というところに大きな魅力を感じます。そしてそのモノクロ写真がこちらです。
ロスト北斎 The Lost Hokusai 「幻の巨大絵に挑む男たち」 - NHKより
現在の画像解析技術ではこのモノクロ画像から使用されていた色がある程度判別できるそうです。判別できなものに関しては絵の具の粒子の粗さなどから素材を特定していくという非常に誠実な方法で作業を行っていきます。
そして、その復元された「須佐之男命厄神退治之図」が、今年11月22日にオープンした「すみだ北斎美術館」に展示されているということです。
番組内で晩年の北斎が口にしたとされる「真正の画工」というフレーズがとても心に響きました。
80を過ぎた北斎は
「俺は、6歳から80過ぎまで筆を取らない日はなかった。それなのに未だ猫一匹かけやしねぇ。意のままにならねぇ。」と悔しがっていたそうです。
75の歳に書いた本では
「自分は6歳から物の形を映す癖があったが70歳以前に描いたものは取るに足らないものばかりだった。だが100歳を過ぎれば1点1格にして生けるがごとくならん(点1つ線1つがまるで生き物のようになること)」
と更に高みを目指すことを決意しています。
そして90歳で亡くなる前に
「5年で生かしてくれれば真正の画工になれたのに」
と語ったということです。
すみだ北斎美術館
復元版「須佐之男命厄神退治之図」が展示されている「すみだ北斎美術館」ですが、JR両国駅から歩いて10分程度のところにあります。
開館時間
- 開館時間:9:30~17:30
- 休館日:毎週月曜日(月曜が祝日、振替休日の場合は翌平日)
となっています
観覧料
常設展と企画展があり、企画展は期間で展示作品を変更していくものです。企画展観覧の場合は料金も高くなりますので初めは常設展でというのもいいと思います。
観覧料は
- 常設展のみが 400円
- 企画展は その都度設定(私が入った時は1,200円でした。この金額で常設展も観覧できます。)
常設展観覧料が無料となる方もいらっしゃるようなので北斎美術館 - ご利用案内をご確認下さい。
散策・鑑賞レポート
ここからは、両国駅からの散策レポートとなります。
経路
JR両国駅から隅田川と逆方向の両国国技館の脇を通って真っすぐ歩くこと約10分で「すみだ北斎美術館」(地図③)に到着です。途中「両国EDONOREN」(地図①)と「江戸東京博物館」(地図②)に立ち寄りました。
それでは出発です。
JR総武線両国駅
さすが大相撲の地、両国です。改札を出ると横綱がお出迎えしてくれます。
左から二代目若乃花(若乃花は3代います)と武蔵丸、最後は現役横綱白鵬です。
浮世絵も飾られていてとても雰囲気があります。何だか気持ちが盛り上がってきます。
駅の出口には、案内が掲載されています。写真が切れてしまったのですが、「すみだ北斎美術館」と記載されています。
駅を出て右側に行くと両国国技館が現れます。天気も良く冬の空らしく空が真っ青でした。
両国EDONOREN
両国国技館が目に入る角に右手には「両国EDONOREN」(地図①)があります。
こちらも、出来たての11月25日がオープンだったのですね。上のページでしりました。
中に入ると、案内所と飲食店と土俵がありました。
案内に掲載されていた飲食店です。お寿司、ちゃんこ、お蕎麦、深川飯、ほぼ日本食です。もんじゃ焼きもありました。
土俵を囲む形でお店が並んでします。
土俵の解説もありました。
両国の案内情報も用意されていて初めての人にもやさしくなっています。1日かけてゆっくりできれば良かったのですが、お腹もすいていなかったのと午後からだったので美術館の方に向かいます。
江戸東京博物館
国技館の脇道を歩いていくと前方になにやら大きな建物が現れます。「江戸東京博物館」(地図②)。
近づくと4つ足が見えてきます。
左には東京スカイツリーが顔を覗かせています。
ちょっとその存在感に圧倒されます。入り口は下にあるようですので下に行ってみます。
ここが入り口です。
再度、上にあがりあの4本足の広場に行きます。チケットがあればここからも展示場に行けるようです。しかしこの広いスペース、イベント会場とかに使うのですかね。風が当たり冬は寒さで厳しいです。
真下からの美術館側の風景です。
こちらは両国国技館側です。
何かお寺のマークが展示されています。浅草寺の鬼瓦のようです。関東大震災の修復で取り外されたもののようです。
この部分
この建物の耐震は大丈夫なんだろうかと思いながら後にします。
すみだ北斎美術館
「江戸東京博物館」をくぐり抜けて、3ブロック先に今回お目当ての「すみだ北斎美術館」(地図③)が姿を現しました。メタリックな外壁で空が青かったせいもありとてもきれいに映えていました。
スカイツリーも少し大きく見えるようになってきます。
では、入場料1,200円支払って館内にはいります。
平日にも関わらず多くの方が訪れていました。展示場は3階と4階になっていて
常設展が4階のみで3階は企画展の方だけ入れる形です。
企画展で入ったので、1階から4階にエレベータで行き3階を観て、一旦4階に戻ってからエレベータで1階に降りるという順路になります。
常設展
1階→4階→1階
企画展
1階→4階→3階→4階→1階
4Fは企画展示場と常設展示場の半々に分かれています。お目当ての「須佐之男命厄神退治之図」は赤い部分に展示されていました。写真撮影は企画展示のみ禁止となているので以降の写真は常設展示場で撮影(フラッシュなし)したものです。常設展示場は撮影可能ですが、ほとんどの方が写真撮影を行わず静かに観覧しているのでスマフォなどシャッター音があるものはあまりお勧めは出来ません。私はスピーカーを指で押さえて撮影しました。
今回企画展示場は「北斎の帰還」と題して、「隅田川両岸景色図巻」をメインに「すみだ北斎美術館」のオープンにより北斎作品が生誕の地すみだに帰って来たこと記念した約120点が展示されていました。
本展のタイトルには、二つの「帰還」の意味が込められています。一つ目は、約100年余りも行方知れずとなっていた幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻【すみだがわりょうがんけしきずかん】」が、平成27年に再発見され、海外から日本へ里帰りしたことを意味します。二つ目は、世界に散逸した北斎の名品が、生誕の地すみだに再び集められ、それが北斎専門の美術館で展示される、つまり北斎が名品とともにすみだに帰ってきたことを意味しています。
これら二つの意味での「北斎の帰還」を祝い、序章「北斎のイメージ」、1章「北斎の描いたすみだ」、2章「幻の絵巻-隅田川両岸景色図巻-」、3章「名品ハイライト」、以上の4つの構成で、前後期合わせて約120点の名品を選りすぐり展示いたします。
北斎の生まれ故郷に誕生した新しい美術館の建築や展示空間で、北斎の名品の数々をご堪能いただき、その芸術世界をお楽しみいただければ幸いです。
メインとなっている「隅田川両岸景色図巻」は3階会場に展示されていて長さ約6メートル40センチもの絵巻で隅田の景色が描かれています。絵巻になっていて日本文化を感じつことが出来ます。
私は、晩年肉筆の「朱描鐘馗(しゅがきしょうき)図」という絵がとても気に入りました。
こちらのページで何作か見ることが出来ます。
常設展示場では、北斎の作品を年代別にその画法とともに紹介されています。どのようい描き方を変えていったのか作品を通して見ることが出来とても面白かったです。
常設展示室は7つのエリアで構成されています。北斎とゆかりの地「すみだ」とのつながり「1.すみだと北斎」から始まり、主な画号により6つに分けたエリア(「2.習作の時代」〜「7.肉筆画の時代」)は、各期の代表作(実物大高精細レプリカ)とエピソードを交えて、北斎の生涯を辿ることができます。
75歳から益々意欲作を作りだしていくところは、高齢者にとっても励みになるのではないでしょうか。年を取っても続けられるものを持つという事は素晴らしいことだなと感じました。
晩年の北斎が絵を描いている姿を描いた絵をもとに作られて再現模型が展示されていました。北斎の腕が動いていました。
常設展示場で写真撮影したものです。
これが展示されています。「須佐之男命厄神退治之図」です。番組で紹介されていたように腕や足に筋肉の付き方を意識して筆を入れています。一見皮膚が弛んでいるようにも見えてしまうのでですが、筋肉の付き方と一致しているそうです。写真では伝わりにくいのですが、色彩の豊かさとそれぞれの表情が観るものを引き付けていきます。
出来るだけ実物に近付けるように再現されたものなのですが、展示さててい本物を観た後ですと深みという点なのか何か違いがあるようで、「本物が観たかったな」という思いが湧いてきます。描かれている人物は病に侵された人たちで「人間の生老病死」が描かれていると考えられています。梅毒、インフルエンザ、疱疹の患者がそれぞれ描かれています。
北斎の知識がない中での記事で薄いものになりましたが、初めての両国と「すみだ北斎美術館」のレポートでした。
関連記事
もう閉館してしまったのですが、2016年9月の浮世絵鑑賞記事で。