kousukuの日記

映画・音楽・スポーツの感想を綴っていきます。

NHKスペシャル『人工知能 天使か悪魔か 2017』の感想

6月25日にNHKスペシャル『人工知能 天使か悪魔か 2017』が放映されました。昨年は囲碁の世界王者がAIに敗れたことを軸にしたものでしたが、今回は将棋の名人とAIの対局を軸としています。

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1年前

囲碁世界王者がAIに敗れる 

昨年、韓国で囲碁の世界王者がコンピュータ「アルファ碁」に敗れるというニュースが世を駆け巡りました。その後にNHKでスペシャルで『天使か悪魔か』の第一回が放映されました。その時の感想記事も書いています。

www.nhk.or.jp

こちらがその時の私の記事です。

NHKスペシャル『天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る』を観て - kousukuの日記

 

1年前は、「いつかは敗れる時が来るだろうが、まだその時は迎えていないだろう」という淡い期待が打ち砕かれたものでした。

ソフトバンクの孫正義氏が

”AIの知能が人間を超えることは逃れられない。よって人間と共存出来るような感情を理解するAI(ロボット)を作っていかないといけない”

という意味の発言をしていたのも印象に残っています。

囲碁や将棋のプロは知能を売り物にしていますから、プロ棋士である羽生善治氏の新たな世界を受け入れないといけないというコメントに重みを感じました。

あれから1年

あれから1年、私たちの生活の中にAIが徐々に入り込んできています。

家電量販店に行けば「AI搭載の~」という言葉あるいは文字を見聞きします。販売側は「AIは便利で賢い」という言葉で確信を持ったように売り込んでいます。

消費者側もこれまでのように疑いの目で見ることは少なくなり、逆にAI搭載という言葉で製品に対して期待を膨らませています。もう、この進歩の勢いは止まらない気がします。AIが私たちの生活に入ってきて成果を上げ始めています。1年前に、こんなにも浸透するとは想像していたでしょうか?

将棋の名人が敗れる

今回のNHKスペシャル「人工知能 天使か悪魔か 2017」は、将棋の電王戦を軸に話を進めています。

www6.nhk.or.jp

過去団体戦で1勝4敗という成績ですから、既に人間は敗れていたと思ってもいいのかもしれませんが、最高位の名人が敗れるという、最後の砦も崩されることになりました。対戦した棋士は佐藤天彦名人で今一番勢いのある棋士です。AI側はPonanzaというコンピューター将棋です。

denou.jp

この対局の棋譜(過程)が公開されていますので詳しい方は確認してみて下さい。一手目から定跡ではあり得ない手を打っています。※私は何故これで勝負が決まっていのかがわからないです。

第1局の棋譜 第2期 電王戦(4月1日) | ニコニコ動画

第2局の棋譜 第2期 電王戦 (5月20日)| ニコニコ動画

Ponanza

Ponanzaは自身もアマチュアで段位を取得している山本一成氏とかつてのライバルソフトの開発者の下山晃氏が共同で開発しているコンピューター将棋です。そう言えば「アルファ碁」の開発者(デミス・ハサビス氏)もチェスが強い人でした。

Ponanzaの戦歴は2017年の世界コンピューター将棋選手権で2017年は2位でしたが2015年、2016年は連覇を成し遂げている世界で最も強いとされるコンピューター将棋です。

4年前に登場してプロ棋士に負けたことがなく、計5万局の教師データをインプットし機械学習しようです。今まで行った自己対局は700万回にもなり、どんどんと強くなっています。この700万という数は人が1年に3000局行ったとして2000年以上かかってしまう数です。

開発した山本一成氏ですら、”なぜ強くなっていくのか解らないので困っている”と言っています。AIは考える過程の説明はしないのですから、その発想はブラックボックスになってしまうのです。恐るべしディープ・ランニング(機械学習)です。

 

Ponanzaの開発者の山本一成氏はブログも書かれています。電王戦の前夜の思いなどが綴られていてAI側の人の感情がわかるところはてうれしいです。

ponanza.hatenadiary.jp

コンピューター将棋

少しコンピューター将棋の世界をのぞいてみるとAI同士で白熱した戦いが繰り広げられているようです。もう人間に勝つことよりもAI同士の戦いに焦点が置かれています。これからの若い人達は、棋士になるという選択より、強いコンピューター将棋を作ることに魅力を感じるかもしれません。藤井4段もそうですが、ほとんどの棋士はコンピューター将棋でトレーニングを積んでいるというのですから

番組では羽生善治氏が”今までスコップで掘っていたものが突然ブルドーザーで掘りだしたようだ”という風にこの変化を表現しています。佐藤名人も今回の戦いを完敗だと言っています。既に人間がコンピューター将棋に挑戦する時代になってしまっているようです。

師弟関係

今快進撃を続けている藤井4段ですが、先日のテレビの取材で興味深い内容がありました。藤井4段もコンピューター将棋でトレーニングして来たのですが、今の師匠に着いた時、初めての師匠との対局で勝利を収めたということです。それで師匠は将棋の手に関しての指導はあまりしないようにしたと語っていました。

このことから、師弟関係においても変化が生じてくるのではないかと思います。スキルアップは主にコンピューターを活用して行い、心の在り方などを中心に師匠がお弟子さんたちに伝えていくのではないかと思います。

佐藤名人のPonanzaに対しての礼や負けを認める時の心の整理の仕方など見ると何か人としての在り方みたいなものもしっかりと受け継がれているんだなと感じました。そういう部分の価値がどんどん上がっていくのではないでしょうか。

 

AIの現状

今回の番組では今AIがどういうところに進出してきているかをいくつか紹介していまいした。スマートフォンでも簡単な会話くらいは出来るようになってきているので、それなりに驚くところも活用されているようです。

タクシーの乗車予測

NTTドコモとタクシー会社が開発した、スマートフォンの位置情報と過去の乗降データを元に日付、曜日、天気などを加味し、タクシー利用者の場所を予測するAIシステムです。2割増しという結果が出ていてベテランドライバーも驚いていた様子が映されていました。

一度利用するともう手放せないものになるだろうとのことでしたが、利用料金はどれくらいになるのかが気になります。AIを導入出来ない例えば個人タクシーなどはどうしていくのかというところも興味深いと思います。サービス面の強化などの違った面で顧客を集めるのだと思います。そっちの方の対策も興味深いと思います。AI搭載の車両の後を付いていくというのもいいのかもしれません。

退職者予測

退職率が高い医療事務の派遣会社で導入を試みたようです。面談時の会話を分析し、その言葉と言葉の順序で退職率の高い人を割り出すというものです。そこでは担当者が全く気付かない社員でも退職率が高いという数値が出ていました。本人からも満足しているという報告がされていてもAIは見逃さなかったようです。再度面談を行うと退職の意志はあったようです。満足だけれども退職を考えているという事はありえるのでしょうけど、面談者はそこまで考えることはしないでしょうし、気付いたとしても行動には起こしづらいものだと思います。人事でのAIの活用はアリなのかもしれません。

犯罪者の再犯確率の判断

アメリカの刑務所事情は、刑務所がいっぱいで更生している受刑者を釈放をしないといけないという状況らしいです。

間に合わないということで再犯率をAIに判断してもらい、再犯率が低い受刑者の釈放を決定するというものです。釈放されない受刑者にその事を知らせたシーンでは、AIに人生を左右されるなんて納得がいかないという批判を述べていました。当然かもしれません。感謝も恨みもない無機質なもののように感じます。

一度AIに悪い方に判断されると、そこから抜け出すのは難しくなる気がします。何故なら、AIがどう判断しているか説明できる人もいないのですから。

AI政治家

一番衝撃的で、とうとうこういう時代に入ってしまうのかと感じたのがAI政治家です。全世界の法律、歴史、経済状況などを教師データとしてインプットし、真の民主主義を目指すというものです。こうなってくると民主主義とは何?と思ってしまうのですが、政治家の汚職が絶えない今、必要性を訴える人たちがいてもおかしくない気がします。

中でも度々大統領の汚職が問題に上がる韓国ではAI政治家の導入の動きがあるようです。

日本もこのまま政治家の不祥事が相次げば考えないといけない時がくるかもしれません。案外築地移転も問題も簡単に判断するのかもしれません。

先ずは民間企業が導入し、その成果が現れはじめにた時には、多数の賛成意見は集まるのではないでしょうか。とうとう映画の世界が現実となってきている気がします。

 

その他には証券取引の8割がAIで取引を行うようになっていることやシンガポールのバス会社は運転手の事故を起こす危険性をAIに判断させ、もし問題が見つかれば再教育するというシステムを導入しているようです。

今後のAI社会 

羽生氏は、今将棋界で起こっていうAIの活躍は、これから我々の社会でも起こることで 社会全体を先取りをしているだけだとコメントしています。

今まで人間の知能中心に回ってきた社会がコンピュータ中心になると様々な変化が考えられます。 電王戦を終えた佐藤名人はPonanzaのことを”将棋の神様に近い存在”とも表現しています。

自動車自動運転の精度を見ても、人が運転するより事故の発生率が少ないというデータが出ています。もう取り入れた方がいいと判断するのは時間の問題です。そこで発生した事故の責任は誰が取るのかという問題はありますが、発生率が低くなるのであれば取り入れた方がいいという結論になります。

私たちが築き上げようとしている社会は、AIに管理されないといけないというものだったという事です。AIを必要とする人類がAIによって悩まされる日々が来ることは間違いないのでしょう。以前の記事にも書いていますが、実はこの機械学習とはまだ序章の段階で専門家から見ると人工知能ではないといいます。本当の人工知能が動き出した社会はどのようになるのか想像もつきません。

この広い地球でAIを必要とし創り出そうとしているのは人間です。そして創造した人間が「AIが天使か悪魔か」と問い掛けています。人間がその答えを見つけるよりも先に、AIが「人間が天使か悪魔か」の答えを出すのかもしれません。

お勧めの映画

以下2つは人間がAIの思考についていけなくなり敵対してしまう映画です。

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